📖図書委員さんによるレビューです!📖 📝『清兵衛と瓢箪・小僧の神様』は短編小説集です。この小説集の面白い点は、どの話にも温かみがあるところです。「お小遣いをもらって駄菓子屋に駆け込んだ、昭和の少年時代」のような、懐かしくなるような様子が、実に繊細に描かれています。(もっとも、自分は昭和に生きてはいないし、駄菓子屋に駆け込んだこともないのですが、なぜかその表現が適切だと思いました。) 本稿では、そのうち1つを紹介させていただきます。 「范の犯罪」は、范という奇術師、すなわちマジシャンの失敗で起きた殺人事件の裁判の話です。有罪無罪のどちらともとれるような事件の真相は、証人や本人の陳述によってより複雑になっていきます。まさに五里霧中、そんな状態で裁判官は判決を出すことになります。 物語の終盤、判決の際、本文に「裁判官は何かしれぬ興奮の自身に湧き上がるのを感じた。」とあります。まさにその通り。読み終えたとき、言葉にはとても形容し難い感動が込み上げてくるのがわかりました。レビューを書くにあたって、そうではいけないのは承知していますが、こればかりは「ぜひ読んでほしい」と言う他にありません。「本能」的な領域で、共感するものがあるはずです。 細かく、どんなところが良かったかを書くにはあまりにも不明瞭ですが、拙いながら書かせていただきます。自分はこの物語を読み終えたときに、なぜこの判決に至ったのかとしばらく考えてしまいました。判決には納得ができるし、自分がその裁判官であったとしてもきっと同じ判決を下す。しかし、その理由が分からない。なぜか。 僕は、この話は正義とは何かを考えさせられる話だと感じました。今でいうと裁判は、絶対的な正義の下に判決を下すものであるように感じます。人を殺したら懲役何十年、物を壊したら罰金何十万円、というように。しかし、この時代の裁判官は一人であるように、ルールがあまり明確でない。少なくとも、今ほど細かく厳重ではない。 裁判の際、范は己が不利になろうとも構わず、すべてを話してみせた。裁判官の前に立っていたのは、殺人犯ではなく、一人の脆弱な市民だったのではないでしょうか。裁判の目的は、「法の力で市民を守ること」、とても極端に、平たく言えば「推定無罪」です。その真意が見事に描写されていると僕は感じました。 この話の先があるとしたら、范の無罪は非難され...