課題図書紹介『風立ちぬ』
夏の課題図書紹介です。
堀辰雄『風立ちぬ』ハルキ文庫
スタジオジブリの同名の映画、「風立ちぬ」の原作とされた小説だ。十数年前に公開されたジブリ版「風立ちぬ」では航空機の設計者の青年と、闘病中の女性との愛情が描かれた。原作では航空機に関する描写は一切ない。代わりに、サナトリウムで療養する「節子」と彼女の傍らに寄り添う「私」との「幸福」な生活が滑らかに記される。
節子の身体は既に病魔に侵されつつあり、二人の日々には始終どことなく死の影が漂っている。
ほとんど間違いなく、年若くして彼らは死に別れる運命にある。しかし悲壮さはなく、鮮烈な自然の情景と共に、寄り添い合って生きる喜びと互いへの静かな愛情が写し出される。
そこはかとない切なさを含みながらも、颯爽と流れていく二人の時間は、「私」にとってかけがえのない「幸福」なのだと感じた。(6組Kさん)
