課題図書紹介『サーキット・スイッチャー』
課題図書紹介です!
📖安野 貴博『サーキット・スイッチャー』ハヤカワ文庫
📝この小説の舞台は完全自動運転車が普及した日本という、少し先の未来。物語は、自動運転アルゴリズムを開発した天才エンジニアである坂本義晴が、ムカッラフと名乗る謎の男に拘束されるところから始まる。「坂本は殺人犯である」と宣言したムカッラフは動画配信とともに尋問を開始し、意図の読めない要求を次々と突きつけていく。
皆さんは自動運転と聞くと、どんなイメージを持つだろうか。「便利そう」「事故が減りそう」などの期待もあれば、「システムのエラーや暴走が怖い」といった不安もあると思う。私はこの小説を読む前、自動運転車の普及により、交通事故が減り、人手不足の解決に繋がるならいいことばかりなのではないかと思っていた。だが読み進めるうちに、ドライバーの大量失職や責任の所在といった複雑な問題が発生する可能性を知り、安易には賛同できないと気づかされた。
ただ、私がこの物語において最も考えさせられたのは、自動運転の是非ではなかった。それは、人は何か大切なものを失ったとき、怒りをぶつける先が必要なのかもしれないということだ。自動運転車による事故で妻子を失った吉岡は、その原因を自動運転のアルゴリズムに求めた。しかし、シュミレーションを通して坂本に対する疑惑が晴れ、ぶつけるべき怒りの矛先を失った吉岡は、「原因は自分にあったのではないか」と自責の念に深く沈んでいく。絶望の中で自分以外に責める相手を失ったとき、人はどう生きていけばよいのだろうか。坂本が語った「社会の行き先を見届ける義務がある」という言葉は、登場人物だけでなく、私たち読者一人一人にも重く投げかけられている。(7組O・Kさん)
