課題図書紹介『かわいそうだね?』『高校生からの商学入門』
6月13日確認の課題図書レビューです。委員さんありがとう!
綿矢りさ『かわいそうだね?』文春文庫
✏️この本は、二篇で構成されています。それぞれに大きな良さがありましたので、個別に書かせて頂きます。
📖「かわいそうだね?」は、彼氏が元々交際していた女性を、家に住まわせていることに、彼女が葛藤を抱える話です。本来なら反対してもおかしな話ではありませんが、事情が事情なだけに彼氏やその女性を責めるわけにもいかず、かと言って黙っていられるわけでもなく…。
この話を読んでいるとき、僕は彼氏に対して、なぜ彼女を一番に考えてやれないのかと苛立ちすら覚えていました。しかし、そのために友達を捨てることができるかと聞かれると歯切れの悪いものです。
彼女のセリフにこんなものがありました。「なにかを失わないと、なにかを得られない」この言葉によく頭を悩まされました。失うには、失うだけの覚悟をもたなければなりません。失う決断をしても、なにも得られなかったらと考えると、失うという決断は簡単には下せません。そんな状況で、皆さんはなにかを失うことができますか?そんなことを考えさせられるような本でした。明確なその後が描かれているわけではありませんが、なにかを失うという選択をした彼女に得られるものがあることを祈らずにはいられません。
📖「亜美ちゃんは美人」は、主人公が美人な親友に嫉妬を抱える話です。隣に並ぶことで、自分が蔑まれてしまうほど美人な親友。そんな親友に息苦しさを感じるも、嫌いになれない、放っておけない。そんな葛藤が描かれています。
友達に嫉妬してしまうといったことは誰しもが経験のあることなのではないでしょうか。だからこそ、共感できる部分が多くあったと感じました。
最後の、友達を見守るという選択をしたのには違和感を感じざるを得ませんでした。というのも、「友達が間違った道に進みそうになるのを正すのが本当の友達」とよく聞いていたからだと思います。"正す"ということは、今の考えを"否定する"ということです。主人公は友達を諭して正さず、友達の考えを尊重して、自分が寄り添っていくことで、「正しくする」という決断をしたのだと思います。なぜそこまでするのか、それが親友という絆なのでしょうね。
嫉妬したり、苛立ったりするけど、それでも見捨てることのできない相手。きっと多くの人にいると思います。そんなあなたに読んで欲しい、そんな本です。
二篇とも女性の視点で描かれており、表紙にも「すべての女子、必見」と書いてありますが、僕はこの本には、男性であっても強く共感でき、惹きつけられるものがあると思っています。また、どちらもスッキリとしない終わり方ですが、そんなところに現実味を感じて、気づきもあります。ぜひ、この本で葛藤して頂けたらと思います。(8組 Y君)