3学期前半の課題図書、最後の一冊を紹介します。 チョ・ナムジュ (著), 斎藤真理子 (著)『82年生まれ、キム・ジヨン』(ちくま文庫) こちらは、出版社作成の広告です。『現代の国語』教科書p.191の下の部分にも、別の広告が載っていますね、ぜひ見てください。 「これは、私の物語だ」―多くの人たちがそう思ったという声が寄せられた作品。異なる年代の人達が、なぜそう一律に思うのでしょう。それは、誰もがキム・ジヨンと同じように、生きる中で積み重なっていくやるせなさを抱えているからではないでしょうか。 📖この本を読み終わった時、最初に感じたのは後味の悪さでした。これはネガティブな意味ではありません。そのように感じた理由は、本の中でずっと根底にあった「女性への差別」の仕組みが最後の最後にぬるっと描かれていたからです。差別の元になる考え方がどれだけ人々の中に強く根付いているかを改めて認識させられたからです。 それは、私にとってはこの本の中に登場する人々、主に男性の行動に対する答え合わせでした。キム・ジヨンの人生にはたくさんの人物が関わっていて、彼女の周りの女性たちは、差別に苦しめられながらも力強く生きています。男性も、全員が全員、悪意ある態度を取っているわけではありません。しかし、彼らは自然に、時には善意を持って、キム・ジヨンたち「女性」に毒を吐くのです。 そういった生々しい雰囲気を持つ人生が、キム・ジヨンの心情も合わせて描かれているところが、私はとてもいいなと感じました。差別が社会問題として取り上げられ、差別をなくすための取り組みがたくさん行われている今だからこそ、これからの時代を生きていくために読むべき一冊だと思います。(5組・Tさん)