課題図書紹介 今井 悠介 『体験格差』(講談社現代新書)/中央大学経済学部『やっぱり経済学はおもしろい! ―高校の勉強ってどう役立つの?』(中央大学出版部)
2月12日までに読む本3冊のうち、2冊のレビューを紹介します!
1冊目: 今井 悠介 『体験格差』(講談社現代新書)
この本はみなさんが入学したての頃(2024年4月)に発刊されました。「体験格差?なにそれ?」とネットの記事等で目に留まった人もいるのではないでしょうか。
たとえばこれ(2024.4)とかこれ(2024.7)とか…読んだことがあるのでは?
先日のフィールドワークもそうでしたが、「体験」で得る学びは本当にたくさんありますよね。そういった経験の一つ一つが積み重なると、大きな成長に繋がっていくことは、みなさんも小さなときから実感してきたことではないでしょうか。
しかし、経済状況等の理由でそういった経験を積むことが大変難しい子どももいます。
こういった問題をどう捉えるでしょうか?自分ができることはあるか、考えながら読んでみてくれるといいなと思います。
📖「体験をする」ということは「知る」ということであり、それは、自らの視野を、世界を広げるということなんだと気付かされました。
この本で切に感じたのは自分の人生がいかに恵まれているのかということでした。本書は統計や、作者自らのインタビュー・アンケートを元に考察を進めていく形で作られています。そして必ずと言っていいほど話題に経済的な問題が付随していました。体験がない親は子どもにも体験がない場合が多い。体験がない子どもは知識の幅や視野が狭くなってしまう。結果、経済的に苦しい状況になってしまう。そんな連鎖を読んでいると感じてきます。
社会科を学んで知るのは世界の貧困や経済格差。では、僕たちの住む日本では?経済大国だし、貧困も何も無いでしょ?と思っていませんか?
貧困も体験格差の問題も存在する、そんな世の中を知る機会があってもいいのではないかと思いました。(8組図書委員 G君)
2冊目:中央大学経済学部『やっぱり経済学はおもしろい! ―高校の勉強ってどう役立つの?』(中央大学出版部)
📖まずこの題名の中にある、"経済学"と聞いてどのような感想を持ったでしょうか?「アカデミックで難しそう」や「お堅そう」という意見を持った方も少なくはなかったと思います。しかし、経済学というのは、"身近なこと"を重視する学問であるのです。
"身近なこと"とは、あなたが住む国、世界のことからあなたの横にいる人のことでもあります。経済学とはこのような広い世界をさまざまな手段で切り取って観ていく学問です。
この本の前半の章では、「男女の賃金格差」や「政府からの10万円給付」等、現在身のまわりで議論されている問題や少し懐かしい出来事から、経済学のカケラを探していきます。身近な出来事を読んでいくうちに、とても自然に経済学のルールが身についていきます。
そしてこの本の後半では、現在高校で学んでいる学問と経済学の関連性が示されていきます。それは社会や数学、保健体育、芸術、外国語等多岐にわたっています。
その中でも一番感銘を受けたのは、社会に関するものです。2つの章の中で、鎖国から開国へと舵を切った江戸時代の日本の苦悩とそれによる日本の行動、香辛料による金儲けに担を発した大航海時代、銀の流入によるインフレーション、それにジワジワと影響されていくヨーロッパ社会を見事に表現しています。人の感情や欲が波のようにつみかさなっていく歴史のおもしろさを"カネ"という観点から捌き、経済を小魚の骨を取り除くようにスッキリとさせて我々の目に卸します。
この他にも様々な教科の面白い点、有用な点を浮き彫りにし積み上げていくのが経済学であることが、様々な中杉の先生を含む中央大学関係である著者のコラムのなかで示されます。
この本を通じて、読者には学際的な視点になることが求められます。学際的とは複数の学問分野にまたがっていることを表します。学際的になると対象に対してさらなる理解を深めることができます。縦割り的な接し方ではなく、包み込むような観察ができることだということです。ネット上で文系/理系と括られがちである今の時代にこそ、広い分野の学問を学ぶ高校一年生の時期を大切にして、様々な教科に取り組んでいけるようにしていくべきだと思います。
あなたもこの本を読んで新しい領域へと足を踏み入れてみてください。(3組 H君)