課題図書紹介 辻村深月『ツナグ』(新潮文庫)
📖この小説は、生者と死者の再会を可能にする人物ツナグ(使者)が、4人の依頼者を死者と再会させていく物語です。
この物語で注目してほしいのが、依頼者が死者と再会した後の場面です。依頼者が死者と再会できるのは人生で1回だけであるため、このチャンスを有効活用できたか否かで結末が大きく変わっていきます。また、4人の依頼者はそれぞれ、性格、年齢、性別、再会した死者との関係性が全く異なり、再会後の気分や行動に差があるのも読んでいて面白いと思いました。
”死者の蘇り”というファンタジー要素が入りつつ、人物や場所の設定には現実味があるため、自分の身近で起こっているような感覚で入り込みながら読むことができる作品でした。(7組 Sさん)
📖生きている人間から依頼を受け、死んでしまった人間と交渉し、引き合せる仲介人、「使者(ツナグ)」。この小説は、そんな使者とその依頼人を、描いた物語だ。
使者の元に現れる依頼人達は皆各々の事情を抱えていて、それぞれが人間らしい嫉妬や後悔、葛藤に苛まれている。一人一人の物語を読んでいく中で、思わず自分だったらどうするかと考えてしまう。しかし、特に印象的だったのは小説の最終章となる「使者の心得」だ。
ここでは、今まで得体の知れない少年として描かれていた使者の視点で語られる。 この辻村深月らしい最後に答え合わせをするような構成は物語をより奥行きのあるものにしている。人間が生まれて死ぬということ、その意味について考えさせられる作品であった。(5組 Oさん)
辻村さんの本、一度嵌ると他の本も読みたくなりますよね。コロナ禍の高校生を描いているこちらもよかったですよ。いつか文庫になったら課題図書に出したいです。(でもそのときは、コロナ禍が小学生のときに来た人達ばかりでピンとこなくなってしまうかな…?)