冬の課題図書紹介 平田オリザ『幕が上がる』(講談社文庫)

 『銀河鉄道の夜』を読んだあとはこちらを。

そういえば、演劇部の1年生が今年はいないそうです…今から部活動をやってみたい人、いかがですか?中杉演劇部、とても素敵ですよ!この本を読んで、演劇もいいなと思った人はぜひ。


📖部活動をがんばる高校生たちの青春小説は楽しい。どうしても一度の人生では経験することができないようなたくさんの部活の、知る由もなかった世界を覗いて擬似体験することができるのがとても嬉しい。演劇部もとても良い体験だった。

高校演劇を通じて主人公ら四人の女子が最終的に演劇や芸術に何らかの形で携わる進路を選んでいた。好きなものに向かって全力で努力したから辿りつくことができた進路だった。今の私は、たとえ好きなものがあっても努力してそれを将来仕事にしようとは考えたことがなかった。自分の好きという気持ちよりも、将来自分が安定して暮らすことができるかどうか、自立をして両親を安心させることができるかどうかということばかり考えて夢を持とうとしてすらいなかった。この作品を通して、いつか譲れない好きなものや夢ができたとき、強い意志を持ってそれに向かって努力したいと心から思うことができた。

この作品は、どこかでこんな青春を送った高校生たちが本当に居たのだと思える素敵な作品だった。(7組Nさん)


📖レビューの前に、このお話は中盤より、「銀河鉄道の夜」の内容がよく出てきます。ちょうど今回の課題図書に含まれている作品ですので、先に「銀河鉄道の夜」を読んでおくと、内容を理解しやすいかもしれません。僕は、図書レビューの関係で、先に『幕が上がる』の方を読みましたが、「銀河鉄道の夜」を読んだ上でもう一度読みたいと思える、素敵な作品でした。

地元の高校演劇部。例年、地区大会で敗退していたこの部に、新しく教師が指導に就きます。これをきっかけに、部員たちが全国大会進出を目標にして、演劇にのめり込んでいきます。演劇について、わからないことだらけ。そんな部員たちの成長が描かれています。

まず、文面的に面白いと思いました。高校3年生の演劇部部長の視点で描かれておりますが、文章のいたるところに含まれる、冗談や軽口に高校生らしさを感じます。

演劇部の大会は特殊で、3年生が大会で勝ち進み続けても、全国大会には出られない仕組みで、この物語を読んでいる当初は、何故、3年生の部員たちはこんなにも全力になれるのかわかりませんでした。実際は、今でもわかったと自信を持てません。しかし物語から、主人公たちは、全国大会に勝ち進むために熱心に取り組んでいるのではなく、演劇が好きで、最高の演劇を作るためにここまで頑張っているのだと感じました。熱中できるものがあるということは、人々をこれほどまでに動かすのだと、そう思いました。

物語の終わりに、「十八歳の私たちの前には、無限の星空がひろがっている。」とありました。今の自分が夢中になれてることでも、そうでなくても、自分が一生懸命になれること、自分が何者かになれることを見つけたいと思えるような作品でした。高校生じゃないとわからないというわけではないけど、高校生だからこそ心に深く刺さるものがありました。(5組Y君)


この作品はももクロの皆さん主演で2015年に映画化されました。本でなくて映画のレビューなのですが、この本を課題図書に選んだきっかけとなった記事です、こちらもよかったら読んでみてください。筑波大学の土井隆義先生による寄稿です。