冬の課題図書紹介 吉村昭『雪の花』(新潮文庫)

 コロナ禍の頃、多くの人に読まれた『雪の花』。1月下旬に松原桃李さん主演で映画化もされるそうです、観てみたいですね。


📖福井県の医師である笹原良策が、人々を天然痘から救うことに捧げた生涯を描いた本です。

鎖国を行なっている中、海外からの天然痘の苗を運んだり、天然痘への恐怖の多い庶民へ取り組みを広めるなど様々な困難が良策に降りかかっていきます。私は自分の人生の全てをかけて、非難をあびても人々を救うために仕事を全うしている姿に感動しました。

また、なにか新しいことに取り組むことは、失敗や非難がつきものです。しかし作中の良策のように、段々なぜ頑張っているのかがわからなくなることがあると思います。そんな時にどんな目的で取り組んでいるのかを思い出したり、頑張ろうと決めた時にどのような思いだったのかを思い出してみることが大切だと教えてくれた本でした。

新しいことに挑戦したい時や、頑張っていることをやめたいと思った時に、良策の頑張る姿に勇気をもらえると思います。(4組 Kさん)


📖この本を一言で表すなら、「生涯を掛けるほどの情熱」です。

舞台は江戸時代。主人公は、天然痘から人々を救うために、その予防法を蘭学の医療から学びます。しかし、それを広める主人公には障害が降りかかります。当時の日本は鎖国下にあり、西洋の医療は悪魔の手法だとされていました。主人公は、なんとか人々の不信感を解き、療法を広めようと専念するのですが…。

人々の不信感は反感を買い、それでもなんとかやり遂げようとする主人公に心打たれました。そして、そのような一生懸命な姿勢は、必ず誰かの元に届くのだと感じました。実際、主人公の周りには、主人公を批判する者ばかりではなく、主人公の話を聞き入れ、主人公の行動に理解を示し協力する者もいました。信念を強く持って行動することの大切さが伝わりました。

また、この話の中には、〝捨てるプライド〟と〝捨てないプライド〟のどちらもが描かれていて非常に興味深いです。主人公は最初、中国の医療法を信仰というほど信じており、蘭学を毛嫌いしていました。しかし、あるときその姿勢を改め、蘭学を信じるようになります。ここに、「捨てられたプライド」が現れています。一方、人々の反感を買っても、一心に予防法を広め続ける姿勢に、「捨てられないプライド」が現れています。一体、この二つのプライドの間には、どのような違いがあるのか。それを考えてみるのも面白いです。

最後に一つ。このお話には現代社会への皮肉も込められているように感じます。

主人公に対して罵詈雑言、石を投げていた人々。しかし、療法の安全性が保障されると、人々の態度は一変。療法を受けに、主人公の元へ現れ始めます。こうした動きは現代社会にも見られます。どれだけ時代が経とうと、人々のこうした態度は変わらないのだと思いました。

誰にも曲げられない強い情熱を持って、正しいプライドの取捨選択を心がけていきたいと思わされる限りです。(5組 Y君)